メディカルラボ通信
医学部の小論文試験の対策方法とは?出題事例や書き方のコツを紹介!
医学部では、国公立・私立にかかわらず、多くの大学で小論文試験が課されています。そのため、医学部合格を目指す方にとって小論文試験は避けて通れない関門の一つといえます。
この記事では、医学部受験における小論文で合格点を獲得するために必要な知識、具体的な小論文の書き方、そして頻出テーマまで網羅的に解説します。医学部受験の小論文対策を万全にして、合格をつかみ取りましょう。
CONTENTS
医学部入試における小論文試験
医学部入試において、小論文試験は単に文章作成能力を測るだけのものではありません。医師としての適性や倫理観、コミュニケーション能力、問題解決能力、そして現代医療が抱える課題への関心度など、多角的な視点から受験生を評価するために用いられます。
評価ポイントは大学によって異なりますが、一般的に以下のような点が重視される傾向にあります。
●論理的思考力
主張に一貫性があり、根拠に基づいて論理的に説明できているか
●課題発見・解決能力
与えられたテーマや課題の本質を理解し、自分なりの解決策や意見を提示できるか
●医療への関心・知識
医療に関する基本的な知識や、最新の動向、社会的な課題に対する理解があるか
●倫理観・人間性
医師としてふさわしい倫理観や、他者への共感性、コミュニケーション能力を持っているか
●文章表現力
誤字脱字がなく、分かりやすく的確な文章で表現できているか
学科試験では測れないこれらの能力を評価するために、多くの医学部で小論文が課されています。
小論文試験の実施について
医学部入試では、小論文を課す大学と課さない大学があります。特に私立大学の一般選抜前期日程では、ほとんどの大学が小論文試験を課しており、2025年度入試で小論文試験を課していないのは下記の6大学のみです。
岩手医科大学/自治医科大学/東邦大学/日本大学/藤田医科大学/関西医科大学
一方、2025年度入試において、国公立大学の一般選抜前期日程で小論文試験を課す大学は下記の4大学のみです。
群馬大学/横浜市立大学/京都府立医科大学/奈良県立医科大学
※群馬大学は英文による出題です。
ただし、国公立大学の中でも、後期日程や推薦選抜などで小論文試験が課される大学もあります。
※上記はあくまでも2025年度入試での実施結果のため、入試内容が変更される可能性があります。必ず各大学の最新の募集要項を確認しましょう。
小論文試験の種類
医学部の小論文試験の内容は大学によってさまざまですが、基本的には以下の5つに大別されます。
●課題文型
課題文が与えられ、その内容を踏まえて要約や論述を行う形式。最も出題の多い形式であり、「筆者が何を言いたいのか」といった課題文の論旨を理解することが重要になる。
●テーマ型
与えられたテーマについて論述する形式。「再生医療の課題と展望について自分の考えを800字で述べよ」といった課題が提示されるだけで、他の文章やデータが記載されていないことが多く、テーマに関する背景知識が求められる。また、写真や絵画から意見を述べさせるものもある。
●図表・グラフ読み取り型
公的機関が発表している統計データなどの図表やグラフを読み取って論述する形式。データを客観的に分析する能力が必要となる。
●教科型
数学や化学、物理、生物など、特定の教科の知識を用いて論述する形式。学校推薦型・総合型選抜の試験で課される傾向にある。
●英文型
出題形式は課題文型に近いが、内容がすべて英文の形式。英文での解答を求められるケースが多いため、読解力だけでなく、英作文の能力や専門的な英単語の知識を身につけておく必要がある。
小論文試験の種類によって必要な対策も異なります。
志望大学の過去問や募集要項を確認して、小論文試験の有無だけでなく、出題傾向もあらかじめ把握しておきましょう。
医学部小論文試験で出題されるテーマ例
小論文試験で高得点を取るためには、出題されやすいテーマを把握し、過去問演習を通じて実践力を養うことが大切です。医学部では時勢を反映したテーマや、普遍的な医療倫理に関する課題がよく出題されます。
●AI(人工知能)と医療:診断支援、治療法開発、医師の役割の変化など。
●地域医療・医師の偏在:都市部と地方の医療格差、へき地医療の課題と対策など。地域枠での入試で課されることがある。
●高齢社会と医療:認知症ケア、終末期医療、在宅医療、医療費増大についてなど。
●再生医療・遺伝子治療:技術の進歩と倫理的課題、社会への影響など。
●感染症対策・パンデミック:新型コロナウイルス感染症の経験から学ぶべきこと、公衆衛生のあり方など。
●チーム医療・多職種連携:医師、看護師、薬剤師など、さまざまな専門職との連携の重要性。
●医療倫理:インフォームド・コンセント、患者の権利、安楽死・尊厳死、出生前診断など。
●医師の働き方改革:長時間労働の是正、女性医師のキャリア支援など。
●予防医療・健康増進:生活習慣病の予防、健康寿命の延伸など。
●災害医療:大規模災害時における医療体制、トリアージなど。
小論文試験の出題事例
2025年度入試 東海大学(一般選抜)
形式:課題文型
広中平祐 著『生きること学ぶこと』の抜粋文を読み、学ぶことの喜び、創造することの愉しさについて、自身の体験を含めてあなたの考えを述べよ。
(実際に受験した生徒からの聞き取りによるため、一部表現が異なる場合があります)
2024年度入試 横浜市立大学(一般選抜)
形式:テーマ型
フールプルーフとは、利用者が操作や取り扱い方を誤っても危険が生じない、あるいは、そもそも誤った操作や危険な使い方ができないような構造や仕組みのことを指します。この考えを利用した構造や仕組みを考察し、1000字以内で説明してください。
小論文を書く際のポイント
実際に小論文を書く際には、どのような点に注意すれば良いのでしょうか。ここでは小論文作成の際に意識すべきポイントを紹介します。
●原稿用紙に書き始める前に
小論文試験のコツは、原稿用紙に書く前にしっかりと準備を行うことです。小論文を書くための材料(主張したいこと、要点、キーワード、構成など)を下書き用紙にまとめておくことで、本文をスムーズに書き進めることができます。
●基本構成
医学部小論文の基本的な構成は、他の小論文と同様に「序論→本論→結論」の三部構成が一般的です。
・序論
問題提起やテーマに対する自身の基本的な立場を明確に示します。読み手の興味を引きつけ、自分なりの考えを簡潔に伝えます。
・本論
序論で示した立場や意見に対して、具体的な根拠や理由、事例などを挙げて多角的に論じます。医学部小論文では、医療に関する知識や倫理観、社会的な視点などを盛り込むことが求められます。
・結論
本論で展開した内容をまとめ、自身の最終的な意見や提言を改めて明確に示します。序論と結論の内容が一貫しているかを十分確認するようにしましょう。
●言葉遣い
正しい言葉遣いは小論文対策の基礎ですが、意図せず誤った表現を使ってしまうことも多いため注意が必要です。
・話し言葉「なので~」「~みたいに」などを使わないようにする
・「~たり、…たり」など繰り返して使わなければならない言葉は確認する
・「見れる」(誤)→「見られる」(正)など、ら抜き言葉を使用しないようにする
●時間配分
試験時間は限られているため、時間配分も重要です。
例えば、60分で800字の小論文を書く場合、
構成を考える時間に10分
序論に10分
本論に30分
結論と見直しに10分
といったように、あらかじめ目安を決めておくと良いでしょう。
●見直すポイント
小論文を一通り書き終わっても油断してはいけません。評価方法は大学によってさまざまですが、どのような点を評価しているかを意識しておく必要があります。
見直す際は以下のポイントを特に注意しましょう。
・内容に一貫性があるか
・原稿用紙の使い方が正しいか
・段落ごとに内容がまとまっているか
・誤字脱字はないか
また、意外と見落としてしまうのが「名前」と「受験番号」です。
これらを書き忘れてしまうと合格の芽が摘まれてしまうため、試験時間が終わるまでに必ず見直すようにしましょう。
小論文対策をいつから始めて何をするか
以下は、学習スケジュールの一例です。
高校1・2年生
・医療関連のニュースや書籍に触れ、関心を深める。
・基本的な文章作成能力(語彙力、文法、構成力)を養う。
・新聞の社説やコラムを読み、要約する練習をする。
高校3年生の春~夏(または本格的な受験勉強開始時期)
・小論文の参考書や対策本を読み、医学部小論文特有の書き方やテーマを把握する。
・頻出テーマに関する知識をインプットし始める。
・短い字数(400字程度)で自分の意見をまとめる練習をする。
高校3年生の秋以降(または受験直前期)
・志望校の小論文の過去問に取り組み、時間配分を意識して書く練習をする。
・医療倫理や最新の医療トピックに関する知識を深める。
医学部の小論文試験対策に早すぎるということはありません。日頃から社会や医療に対して問題意識を持つことが、質の高い小論文を書くための第一歩となります。
また、医療関連のニュースにアンテナを張ることは、医学部生や医師にとっても必要不可欠です。受験前から習慣化しておくことで、医師としての成長速度を高められるでしょう。
医系専門予備校の活用
医学部の小論文試験対策として、医系専門予備校を利用することもおすすめです。独学で対策する場合、作成した小論文を添削してもらう機会が少なく、モチベーションを維持することも難しいかもしれません。また、参考書などには解答例が記載されていますが、解答例だけでは自分の書いた答案がいったい何点程度取れているのかを確認することが難しいでしょう。
しかし、医系専門予備校では経験豊富な講師から専門的な指導を受けることができ、小論文を定期的に添削してもらえるため、改善点が明確になりやすいです。小論文を客観的に評価してもらうことで、現在の自分の実力と合格ラインまでの距離感をつかむこともできます。また、最新の入試情報や志望大学の過去問を入手できることも、大きなメリットの一つです。
医系専門予備校メディカルラボでは、小論文試験のプロに1対1で指導してもらえる「小論文対策講座」を実施しています。ただ小論文問題に臨むのではなく、一人ひとりの実力や志望大学の傾向に合わせて対策することができ、効率的に合格可能性を高めることができます。「小論文対策講座」は全国26校舎で開講しておりますので、小論文の書き方にお悩みの方は、ぜひお近くの校舎へご相談ください。