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2021年5月号『医学部を目指すための学習アドバイス~化学編~』

 2021.5.18 Updated
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 ゴールデンウィークも終わり,新年度の生活リズムにも慣れてきた頃でしょうか。
 今回はメディカルラボの化学講師の早川泰之先生に,2021年度入試の傾向を分析していただくとともに,医学部を目指す上で必要な化学の学習ポイントについてアドバイスをいただきました。

 

大学入学共通テストの化学を振り返る~変わった点・変わらなかった点~

 2021年度の大学入学共通テスト(以下,共通テスト)は,初めての実施ということで出題内容・形式において注目を集めるものになりました。メディカルラボでは,過去2回の試行調査(プレテスト)や新学習指導要領から考えられる様々な出題パターンを検討してきました。今回の共通テストによって,出題傾向がより明確になったので,今後の対策をさらに高い精度で進めていくことが大切だと考えます。
 解答時間と配点は,大学入試センター試験(以下,センター試験)と同様でした。化学の平均点(第1日程)は57.59点(得点調整後)でしたが,共通テストへの対応力によって得点に差が出やすい内容でした。実際,上位層の受験生では,日頃から柔軟な思考力を試される問題演習ができるため,本番で実力を発揮できたケースが多かったです。一方,その次の層ではセンター試験に対応できるが,共通テストが苦手という受験生が多く,得点が伸び悩んだことが印象的でした。
 ここで,センター試験と比較して共通テスト本試験「化学」(第1日程。2021年1月17日実施)における〔変わった点〕,〔変わらなかった点〕を振り返ってみましょう。
〔変わった点〕
 形式的な相違点としては,次のような点が挙げられます。
 ・センター試験で後半に出題されていた選択問題がなくなり,大問すべてが必答に
 ・方眼紙にプロットしたグラフを用いて答える問題の導入
 ・計算結果の数値そのものの選択ではなく,各位それぞれの数字を直接答える問題の導入
 内容的な特徴としては,下記のような新学習指導要領を反映している出題が見られました。
 ・光化学反応に関する問題
 ・補聴器で使われる電池のように身近な素材に関する問題
 共通テストの化学は,大学入試センターが発表した方針によると,次のことを意識した問題作成になっています。
『受験者にとって既知ではないものも含めた資料等に⽰された事物・現象を分析的・総合的に考察する⼒を問う問題や,観察・実験・調査の結果などを数学的な⼿法を活⽤して分析し解釈する⼒を問う問題などとともに,科学的な事物・現象に係る基本的な概念や原理・法則などの理解を問う問題を含めて検討する。』
「令和3年度大学入学者選抜に係る大学入学共通テスト問題作成方針」より抜粋)
 下線部を反映している内容として,2021年度化学本試験(第1日程)では,第3問のシュウ酸イオンを配位子とする鉄(III)の錯イオンの光による反応,第5問のグルコースを題材とした反応速度と有機化合物の性質が扱われていました。前者は,通常扱わない錯イオンの化学反応が光によって進行する点,後者はグルコースを理論分野や有機分野の手法で扱う点を中心に作成されていました。
 単元ごとの出題に慣れた上で,このように分野をまたいだ問題への対応力(いわゆる総合的な思考)が必要になっていることがわかります。どちらの問題も物質の変化量を定量的に分析して,化学的な反応,物質の構造や性質を把握していく能力が必要とされています。
 従来,物質の性質や定量的変化を捉える手法として,中和反応や酸化還元反応がありました。近年,基礎医学的な分野では,チャネルロドプシンを用いた光遺伝学のように光照射によって反応を引き起こす手法が多用されています。光を有効に活用することが,今後のトレンドになっていくでしょう。これからの時代の入試では,未来を切り拓く新しい方法論を用いて化学的な事象を捉えることが重要になっていくと思われます。
〔変わらなかった点〕
 上記リンク先には,『これまで問題の評価・改善を重ねてきた⼤学⼊試センター試験における良問の蓄積を受け継ぎつつ』という文章があり,共通テストにおいてもセンター試験のような正誤問題,複数解答の組合せ問題,実験・グラフ問題,基本的な計算問題などがありました。なお,試行調査(プレテスト)にあったような前問の誤答を用いた解答が正しく導かれた場合の解答が正答になる問題は,2021年度は出題されていませんでしたが,今後は注意が必要です。

 

2021年度 私立医学部入試における化学の出題傾向

 2021年度の私立医学部入試における化学では,新型コロナウイルス感染症(以下,COVID-19)の影響で,合成高分子分野がないか,内容的に軽めになっていたことが特徴的でした。愛知医科大学や久留米大学などは,事前に合成高分子分野を出題しないことを公表していました。また,他のいくつかの大学では合成高分子分野より天然高分子分野(特に糖類)の出題が多くみられました。これらは,COVID-19の感染拡大抑制を目的に,全国の高校で臨時休校が実施されたことによるものです。
 トピックとしては,2021年度においてもノーベル賞を受賞した研究内容に関する内容を題材とした出題がありました。例えば,蛍光タンパク質GFP東京慈恵会医科大学,獨協医科大学)や,リチウムイオン電池大阪医科大学,近畿大学)です。
 東京慈恵会医科大学の問題は,GFP蛍光を出す化学構造を光の波長とエネルギーに着目して考察したものです(図1)。良問なので,これからの学習にぜひ役立てたいものです。新学習指導要領で新たに扱われる光化学の分野は,反応過程の促進,物質の定量などに関係しており,今後も共通テストのように思考力を要する問題のテーマとして取り上げられる可能性があります。ぜひ注意しておきましょう。また,リチウムイオン電池は,2020年度(慶應義塾大学,金沢医科大学,藤田医科大学,兵庫医科大学)から引き続き,出題されやすいテーマなので,今後も出題に備えておくとよいでしょう。
図1 2021年度 東京慈恵会医科大学 一般選抜 化学 大問4より
 上に挙げたような目新しいテーマにも注意は必要ですが,従来通りの出題内容は2021年度も出題されており,「気体」,「反応速度」,「化学平衡」,「有機化合物の構造決定」などの項目が多く出題されていました。また,形式や内容,出題量が大きく変わった大学はほぼなかったものの,昭和大学は例年見られるアミノ酸や核酸といった生体物質に関する高度なものはなく,ラクトースやグリコーゲンなど教科書に記載のある一般的な糖類に関する出題となっていました。
 ここで,2021年度において差がつきやすい項目を挙げておきます。
●実在気体の状態方程式(東北医科薬科大学)
●アレニウスプロット(埼玉医科大学)
●氷熱量計(慶應義塾大学,類題:2008年度 東京大学)
●COD〔化学的酸素要求量〕(日本大学)
●フェノール樹脂(日本医科大学,東海大学)
●酒石酸の立体異性体とフェーリング液を構成する物質(東海大学)
●水蒸気蒸留(藤田医科大学,類題:2020年度 立命館大学)
●ミカエリスメンテンの式(大阪医科大学,類題:2017年度 大阪医科大学)
●メタンハイドレート(関西医科大学,産業医科大学)
●アセトアミノフェン(久留米大学)
●アスパルテーム(福岡大学)
●ルミノール,酸化チタン(IV),GFP(獨協医科大学)
●アセトアミノフェン,タミフル,β-ラクタマーゼ(獨協医科大学)
●レシチン,コリン(獨協医科大学)
●シトクロムc のアミノ酸数(金沢医科大学)
●エアロゾル,新型コロナウイルス,飛沫(兵庫医科大学)
●陰イオン界面活性剤(兵庫医科大学,川崎医科大学)
●酸化銀電池(川崎医科大学)
 医学部入試における化学は,時間が短い割に問題数が多い傾向にあります。そのため,上記のような項目について,化学的な事象を理解して演習量を増やしておくと,本番で大きなアドバンテージになります。
 

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